洗い桶に使われていた古代の丸木舟(五分一と下桐)
 大河津村五分一の長谷川さんのお家に古代の舟というのを保存しておられました。すすけて真っ黒くなっていますが、三間もある細長い丸木の舟で、へさきとともに二つづつ穴があいています。長谷川さんは、「先祖がこの丸木舟に乗ってここに上陸して住み着いたのです」といっておられました。また、下桐の金子徳治さんのお宅にも長谷川さんと同じような丸木舟がありました。ともの方が壊れておって、しかも底が腐って穴が二つ三つあいています、家の人は珍しいものとも知らずに大根などを洗う桶のかわりに川に浮かべておきました、長さ九尺、幅二尺で桜の一本木をちょうなで仕上げたもののようであります。金子さんのものは、長岡の博物館に寄附し、陳列室にいつも展示されています。毎年のように大水に襲われて一面湖水のような原を、こんな丸木舟をあやつりながらあちこちと行き来したのでありましょう。
*長谷川さんの舟は、平成八年二月現在自宅で保存されています。