詩 東京 五十嵐 重尾
       (下荒町万之丈出身)

 浅 春

蝶の群れる姿に咲く
 窓辺のシクラメンのうえに
銀色の月が浮かぶ
雲ひとつない 夕空に

猫の声が遠のいていく
露地の闇に
ほの白く梅が咲き

露地へ折れてきた足音が
会釈して 隣家に入る
軒端の冷たい風に
梅の香がながれ
中天に 月が懸かる