男性、女性あわせて21人の歌人が、毎月一回詠んだ歌の研究会を開いている。

・海に向く厨に 夕餉の支度
  なす吾に 眩しも
   夏至の入日は

・沖遠く梅雨の曇りの下に
  浮ぶ佐渡の島影
   ほのかに 青し

・泰山木の純白の花手に載せて
  その芳潤な香りに
   しばしを 醉へり

・朝食に 梅干し一つ所望せり
  戦友会に 元軍医殿

・梅雨空の煙る街並
  櫛の歯の欠けるがごとくに
   空地 増えゆく

・梅雨晴れの抜けるがごとき
  青空に向けて
   凌霄の花咲き上がる

・訪ぬれば渡り廊下で子の家と
  つなぎ住み居り兄ら夫婦は

・畑跡にすすき葛の葉
  ほびこりて 葉うら見せ折り
   文月の風に

・本閉じて ねむらむとする
  梅雨の夜の 真闇を
   裂きて 杜鵑鳴く

・真夜中に ゴキブリさんと
  出会いたり あっと言ふ間に
   冷蔵庫の下

・水芭蕉 白い花々影写す
  池にざぶざぶ鍬を洗えり

・朝もやに煙る路地うら
  不景気の機械止まりし
   辺り寂かや

・雨音の強くなり来し庭隅に
  子猫の声のしきに高し

・生け垣の思わぬ方に
  鉄線の返り花咲く
   濃き むらさきに

・古代印度の 経典刻む
  貝多羅葉目見える
   きょうもわれらのいのちよ

・槌の音も 重機の音も
  静まりて 棟上げの音も
   白い月みる

・ひそやかに 密蔵院の小夜
  更けて 良寛像と
   われと対き合う

・水緑む池面に映る電線の
  影を歪めて 鯉の泳げり

・雪の下の花の白きも
  おとろへて 梅雨に湿れる
   空気がよどむ

・留守中に庭取られたり草達に
  我れは日中を草と戦ふ

・冷房の車を降りて
  梅雨晴れの庭に敷石
   素足で踏めり

備 考
 むかしのうたに、
歌をよむ女房などは持たぬもの
ティッシュを尻に
  シキシマの道とあった。
女性には、学問のいらない時代の歌で、今の時代は、センサイな感受性がないと、夫婦仲もうまくゆかない。
もっとも、どっちかというとシリにしかれた方が平和なんだけど。
いつも俳句を拝見しているのでたまには、短歌の原案をおめにかけた次第。
これからこの歌の相互批判会がひらかれる。