漁協競場を覗く
 ぶらぶらとたまの秋日和に誘われて海辺を歩くのはたまらなくこの町に住む幸せを感じさせてくれる。
 家の中ではガラガラと騒音にしか聞こえない港の現場の音や動きが,秋日和と汐風の中では活気に溢れるものとして聞こえ見えてくるから不思議である。
 いつ終るともない感じの港湾工事も一応一段落で埠頭もすっきりした形になり,夏場活躍したヨットも纜綱でつながれて所在なさ気にゆらゆらと,ボートも肩をならべて秋陽の中で終日日向ぼっこである。
 岩壁はいつでも誰かが釣り糸を垂れ又誰かがそれを眺めている。
 ぐるりと番屋の裏を廻ると足は自然と漁業組合の競り場へ向う。
 三時からの競りの準備に運び込まれたトロ箱が並べられ、その脇では入港したばかりの船から運び込まれた獲れたての魚が種類や大きさ別にせっせと仕分けられている。
 アジが大漁で値下がりして、今が味も良く値も安く食べ時と言う。そろそろ河口での鮭が並び、今年は今時分までノドグロが釣れている。例年なら延縄はタラ釣りに入っているのだが水温が高いせいだろうか。ひと頃不漁だったッブがある。カニも並んでいるが柿の実る頃はペン。